こんにちは。
ところでみなさんの会社の会議、いい会議ですか?
会議は本来、一人では決められない論点を持ち寄って意思決定したり、新しい価値を生み出したりするための場です。経営会議、部門会議、毎週の定例。一人ひとりが毎月それなりの時間を、会議に使っているはずです。
ところが現場をのぞくと、こんな景色によく出会います。
- 発言するのは、いつも同じ2〜3人
- 資料の読み上げで、前半の30分が終わる
- ノートPCを開いて、明らかに別の仕事をしている人がいる(いわゆる内職ですね)
- 「いい議論だったね」と解散して、1週間後に何も進んでいない
思い当たる景色があるとしたら、もったいないです。会議は、組織の中でいちばん多くの人の時間が同時に使われる場だからです。
私は会議変革コーチとして、組織開発のご支援では必ず会議にオブザーブ(同席して観察)します。誰が話し、誰が黙り、何がどう決まるのか。会議を見ると、その組織の課題はほとんど見えてきます。そして、会議が変わると組織が変わる場面を何度も見てきました。
その会議を変えるいちばんの近道が、ファシリテーションです。今回は、ファシリテーターの仕事の核心である「問い」について、明日の会議から使える形でお伝えします。
この記事でわかること
- 「質問」と「問い」の決定的な違い
- いい問いが刺さる会議を、始まる前に設計する方法
- 会議で使える「問い」の4つの方向と、そのまま使える例
- 問いのあとの沈黙と、発言しない人への向き合い方
- 「いい議論だった」で終わらせない会議の閉じ方
ファシリテーターの仕事は「順番に質問すること」ではない
ファシリテーターと聞くと、参加者に順番に話を振って、場を回す人をイメージするかもしれません。それだけなら、誰にでもできそうですよね。
でも、本物のファシリテーションは少し違います。役割はいろいろありますが、一つだけ挙げるなら、私はこう考えています。
問いの力で、まだこの場に存在していない新しい答えや価値を生み出すこと。
ここで鍵になるのが、「質問」と「問い」の違いです。似た言葉ですが、会議の中での働きがまったく違います。
質問は「すでにある答え」を場に出す
質問は、その人がすでに自覚していることを、場に出すために使います。
たとえば「この施策、現場ではどう受け止められていますか?」と現場の責任者に聞く。本人にとっては知っている話です。でも、それを知らなかった企画側には新しい気づきが生まれます。
つまり質問は、誰かの頭の中にある情報を、場全体へ広げるための技術です。もちろん、会議には欠かせません。
問いは「まだない答え」をつくる
問いは、そこからもう一歩先へ進みます。
採用がうまくいっていない会社の会議を想像してください。「なぜ応募が集まらないと思いますか?」と聞けば、給与、知名度、求人媒体……と、みんながすでに考えていた原因が出てきます。これは質問です。
そこで、こう問い直してみます。
「そもそも私たちは、どんな人にとって“選ばれる会社”なんでしょうね?」
こう聞かれると、全員がその場で考えなければならなくなります。すぐに答えが出ない。その「すぐに答えが出ない」こと自体が大事で、そこで初めて、わざわざ集まったメンバーで考える意味が生まれるのです。
| 質問 | 問い | |
|---|---|---|
| 目的 | すでにある情報を場に出す | まだない答えを、その場でつくる |
| 答えのありか | 答える人の頭の中 | まだ誰の頭の中にもない |
| 例 | 「なぜ応募が集まらないと思いますか?」 | 「私たちは、どんな人に選ばれる会社なのか?」 |
| 会議での働き | 情報共有・現状の把握 | 発想の転換・意思決定の質を上げる |
コーチコーチングのセッションでやっていることも、実は同じです。相手がすでに答えを持っていることを聞くと、話は整理されます。でも前に進むのは、相手の中でまだ言葉になっていないものを、問いで引き出せたとき。会議は、それを何人かで同時にやる場なんです。
話がうまい人ほど、ファシリテーションでつまずく
少し意外かもしれませんが、話がうまい人が、ファシリテーションもうまいとは限りません。むしろ話すのが得意な人ほど、自分で答えを出しすぎてしまうことがあります。
実は私自身、もともと人前で話すのが大の苦手でした。緊張すると手も声も震えて、頭が真っ白になるタイプです。そんな私が変われたきっかけは、「自分の役割をうまくこなそう」とするのをやめて、「目の前の相手の役に立とう」と意識を切り替えたことでした。
ファシリテーションも同じです。主役はファシリテーターの話術ではありません。参加者の頭の中で、新しい答えが生まれることです。そのための道具が、問いなのです。
問いが刺さるかどうかは、会議が始まる前に決まっている
では、いい問いさえ用意すれば会議は変わるのか。実は、そうでもありません。どれだけいい問いでも、それが刺さる場になっているかどうかは、会議が始まる前にかなり決まっています。準備しておきたいことは3つです。
議題ではなく「終わったときの状態」を決める
会議を始めるときに最初に決めてほしいのは、議題ではありません。「この会議が終わったとき、私たちはどんな状態になっていたいのか」です。
たとえば「新商品について話す」という議題では、何をもって会議が終わったと言えるのかがわかりません。これを、次のように置き直してみてください。
これだけで、1時間の使われ方が変わります。途中で別の論点が出てきても、「面白い話だけれど、今日の終了時点としてそこまで扱う必要があるか?」と判断できるからです。議論を止める基準も、広げる基準も、ゴールがあって初めて持てるのです。
「広げる会議」か「決める会議」かを先に決める
ゴールと一緒に決めておきたいのが、今日はアイデアを広げる会議なのか、意思決定する会議なのか、というスタイルです。ここを間違えると、同じファシリテーションでも結果が正反対になります。
- 広げたい会議で「で、結論はどれですか?」と急ぐと、その瞬間に場の思考が縮む
- 決めたい会議で「似たケースは他にありませんか?」と広げ続けると、論点だけが増えて何も決まらない
上手か下手か以前に、今どちらへ場を動かしているのかを、ファシリテーター自身がわかっていること。これが土台です。
説明は、会議の外に出す
そして、できれば説明は会議の外へ出してください。資料に書いてあることを全員で読み上げるために、忙しい人たちが同じ時間に集まる必要はありません。人が集まる価値があるのは、一人では決められない論点に、それぞれの専門性や視点をぶつけるときです。
事前に資料を読んでくる文化をつくるのは、正直、簡単ではありません。それでも、説明に30分使って残り30分で議論する会議と、最初から60分議論できる会議。これが毎週積み重なったときの差は、かなり大きくなります。
私の講座の受講生の方で、自分の事業部の会議に「インプットと共有は事前に済ませ、会議当日はディスカッションだけ」という型を思い切って持ち込んだ方がいます。もともと優秀なメンバーがそろい、意見も出る会議でした。ただ型がなく、思いつきで進むので、結論はいつも最大公約数的。会議中に内職をする人もいる状態でした。型を変えてから発言の質が大きく変わり、意思決定の解像度が上がって、不採算だった事業はV字回復しました。今では、会議が始まる前から議論がフライングして始まっているそうです。
冒頭の5分で、参加者の頭を会議室に連れてくる
ゴールを決め、資料も読んでもらった。それでも、参加者がいきなり本気で考え始めるわけではありません。
会議室に入ってきた人の頭は、まだ会議室にありません。たぶん、さっき返しそびれたメールか、この後の商談のあたりにいます。その状態でいきなり「では、何か意見ありますか?」と始めても、出てくるのは無難な意見です。
この1時間の「意味」を言葉にする
だから私は、冒頭でこの時間が何のためにあるのかを言葉にします。
「今日ここでターゲットの方向性が決まれば、来月から検証に入れます。逆に、ここが曖昧なままだと、判断はまた次回に持ち越しです」
先ほど決めたゴールを、進行上のルールとしてではなく「この時間の意味」として共有するわけです。すると参加者の中に、「今日はただの定例ではなく、ここで考える必要がある時間なんだ」という認識が生まれます。
報告ではなく、少し大きな問いから入る
そのうえで、報告からではなく、少し大きな問いから入ります。たとえば採用会議なら、応募数の報告から始めるのではなく、こう聞いてみます。
「今の採用活動をこのまま1年続けたとして、本当に欲しい人が採れる会社になっているでしょうか?」
すぐには答えられません。でも、だからこそ頭が動き始めます。
私がつくりたいのは、全員がずっと興奮しているような特別な状態ではありません。この時間だけは参加者の思考が同じ論点に集まり、役職や担当を越えて遠慮なく考えられている状態です。同じメンバー、同じ資料でも、頭が会議に入っているかどうかで、出てくる答えの質はかなり変わります。
会議で使える「問い」の4つの方向
では、「考えないと答えられない問い」は、どうつくればいいのでしょうか。
前提として、問いは基本的にオープンクエスチョン(「はい/いいえ」では答えられない、自由に考えられる問い)で投げます。「この案でいいですよね?」と聞くと、参加者はファシリテーターが期待している正解を探し始めます。確認には使えますが、新しい議論をつくりたい場面で誘導を重ねると、参加者自身の思考が止まってしまいます。
そのうえで、問いの「方向」を4つ持っておくと、会議でかなり使いやすくなります。
① 垂直に掘る問い
誰かが「この商品は、若手には売れにくいと思います」と言ったとします。ここで次の意見に移るのではなく、こう聞いてみます。
「そう感じたのは、どんな場面からですか?」
すると、一つの意見に見えていたものの下から、実際にお客様から聞いた言葉や、本人が前提にしている考えが出てきます。会議では結論だけが先に並びがちです。その下にある前提を掘ると、メンバー同士が、実は違うものを見ていたことに気づけます。
② 水平に広げる問い
「別のお客様でも、似たことは起きていませんか?」
こう振ると、一人の経験だった話が、他の部署や案件へ広がります。一つの事例だけで判断せず、共通するパターンがあるかを確かめるときに使います。
③ 視点を移動する問い
私がかなりよく使うのが、これです。
- 「お客様がこの会議に参加していたら、今の議論を聞いて何と言うでしょうね?」
- 「社長の立場なら、この2つの案のどちらを選ぶと思いますか?」
人は自分の役割から考えていると、見える範囲が固定されます。一度別の立場に移動すると、同じ情報を見ていても違う判断基準が出てきます。
④ 前提を動かす問い
「今の延長で10%成長させる」ことを考えている会議で、こう聞いてみます。
「もし売上を10倍にしなければならないとしたら、今と同じことを続けますか?」
もちろん、その場で本当に10倍の計画をつくるのが目的ではありません。今の前提の中だけで最適解を探している思考をいったん外に出し、戻ってきたときに違う選択肢が見える状態をつくるためです。
垂直に掘り、水平に広げ、視点を動かし、必要なら前提ごと動かす。この4つの方向を意識するだけで、「他に意見ありませんか?」だけだった会議の問いは、かなり変わります。ちなみに「他に意見ありませんか?」は、「ありません」を引き出すことにかけては、かなりの名人です。
いい問いのあとに来る「沈黙」に耐える
いい問いを投げるほど、次にあることが起こります。誰も答えないんです。
当然です。まだ誰も答えを持っていないことを聞いたのですから、参加者にはその場で考える時間が必要です。
ところが、この沈黙に耐えられない人がとても多い。数秒返事がないだけで、「たとえば、こういうことです」と自分の答えを補足してしまう。すると参加者は「この人は答えを持っていて、それを当てればいいんだな」と理解します。せっかく問いで考え始めたのに、ファシリテーター自身がその時間を終わらせてしまうのです。
人は、問いのあと1秒も待っていない
これは会議に限った話ではありません。教育学者のメアリー・バッド・ロウは、授業中の教師の問いかけを研究し、教師が生徒の答えを待つ時間は多くの場合1秒にも満たないこと、そして待つ時間がおよそ3秒を超えると、生徒の答え方にも教師の関わり方にもはっきりした変化が表れることを報告しています(Rowe, 1986)。
沈黙の3秒は、問いを投げた側には30秒くらいに感じます。でも、その3秒は参加者が考えている時間です。いい問いを投げたと思ったら、少し待ってみてください。



1on1でも、まったく同じです。沈黙は、相手が自分の中に答えを探しに行っている時間。そこで助け舟を出すと、出てくるのは相手の答えではなく、こちらの答えになってしまいます。待つのも、立派な技術なんですよね。
見るのは、議題ではなく「人」
待っている間に見るのは、議題ではなく人です。
- 誰が考え込んでいるか
- 誰が言いかけて、やめたか
- 誰かの発言を聞いた瞬間に、表情が変わった人はいないか
会議に流れている情報は、発言だけではありません。たとえば何か言いかけてやめた人に「今、何か浮かんでいました?」と聞くと、それまで出ていなかった大事な懸念が出てくることがあります。
ファシリテーターが見ているのは、議題ではなく人なのです。
全体で動かないときは「2人1組の5分」
それでも、人数が多い会議では場が動かないことがあります。考えてはいても、10人の前で話すところまではいかない人がいるからです。
そこで私が使うのが、2人1組のペアセッションです。一つの問いを渡して、5分だけ2人で話してもらう。すると、全体では一度も発言しなかった人が、1対1なら普通に考えを話していたりします。戻ってきたときに「さっき2人で話していたんですが」と共有されることで、全体には出てこなかった情報が会議に戻ってきます。
教育の現場でも、「シンク・ペア・シェア(一人で考え、ペアで話し、全体で共有する)」という名前で知られている方法です(Kent State University)。
時間がない会議ほど、この5分を惜しく感じるものです。ただ、発言が出ないまま20分進めて結局何も決まらないなら、一度小さな対話に分けたほうが、結果的には早いのです。
「いい議論だった」で終わらせない。会議の出口を設計する
議論が深くなってくると、会議には熱量が生まれます。ただ、ここにもう一つ大きな落とし穴があります。いい議論ができたことと、事業が進んだことは、別なのです。
いい議論ができた会議ほど、終わった瞬間の満足度は高くなります。「今日はいい話ができたね」と言いながら、全員が部屋を出る。ところが1週間後に集まると、ほとんど何も進んでいない。みなさんの会社でも、心当たりはありませんか?
だから最後に必要なのは、議論をまとめることではなく、次の状態を設計することです。
ここまで置ければ、次の会議は前回の続きから始められます。
これは、冒頭のゴール設定と同じ考え方です。最初に「終了時点でどんな状態になりたいか」を決め、最後にそこへ到達できたかを確かめ、次に集まるときの状態を決める。入口と出口がつながると、会議は毎回ゼロから始まる単発のイベントではなく、事業を前回から次回へと動かし続ける装置になります。
私の支援先でも、会議変革を進める中で業績が1.5倍以上になったケースがありました。特別にすごいアイデアが一度出たからではありません。それまで曖昧だったことが会議で決まるようになり、決まったことが次の会議までに動く。その積み重ねで、事業の進み方そのものが変わったのです。
明日の会議から試せる3つのこと
全部を一度に変える必要はありません。まずは、この3つから試してみてください。
- 会議の冒頭で「この時間が終わったとき、どんな状態になっていたいか」を全員で握る
- 「何か意見ありますか?」の代わりに、少し考えないと答えられない問いを1つだけ置く
- 問いのあとに沈黙が来ても、すぐに自分で答えない(心の中で3つ数える)
それだけでも、会議の景色はかなり変わってくるはずです。
よくある質問
動画でも解説しています
この記事の内容は、YouTubeでもお話ししています。実際の会議の場面を思い浮かべながら見ていただくと、問いのあとの「間」の感覚もつかみやすいと思います。
まとめ:ファシリテーションは、会議を気持ちよくする技術ではない
質問は、すでにある答えを場に出す技術。問いは、まだない答えをその場でつくる技術です。
そしてファシリテーションは、会議を気持ちよく回すための技術ではありません。問いによって、それまで存在していなかった答えをつくり、その答えを意思決定と行動につなげる技術です。
会議は、組織の中でいちばん多くの人の時間が同時に使われる場です。だからこそ、会議が変われば組織は変わります。これは、数多くの会議に同席してきた私の確信です。
みなさんの職場で、最近「この一言で場の空気が変わった」という問いはありましたか? 思い出せたら、それがあなたのチームに効く問いの原型です。次の会議で、ぜひもう一度使ってみてください。




